りら9
これは一見の価値がありそうだ。『あおいみなみ』に礼を言うのは放課後でもいいだろう。
「わかった。招待してもらおう。ところで小川。俺に何の用だったんだ?」
尋ねると彼女は慌てたように首を横に振りながら、
「い、いや。な、何でもないの。ちょ、ちょっと声をかけただけ」
視線を逸らし、どもりながら答える。
何でもなくはとても見えそうにないが、彼女にかまっている暇はない。急がなければ学食の席が埋まってしまう。
「おい、緋影。早く行こうぜ!」
大竹はすでに待ちきれなさうに廊下に出ている。
「じゃ、またな。小川」
短くそれだけを言って大竹のあとを追う。
小川は緋影が教室から立ち去ったのを確認すると再び大きな溜息をついた。後ろに汲んでいた手には二つの弁当箱がある。
「……せっかくお弁当つくってきたのに……」
心底残念そうに呟くと手作りの弁当を見つめて彼女はトボトボと自分の席に戻った。