ぶりら8
「あっ!てめえ手前っ!逃げるかっ!」
大竹剛は中学からの知り合い、もとい悪友だ。
頭の方はからっきしなのに、格闘技の方はかなり強い。なにしろ県内で最強と噂される空手部のキャプテンを秒殺したくらいだ。彼と戦ったことは一度だけあるが、その実力は自分の上をいく。道具を使わずにこいつに勝てる自信はない。
「うるさい。とにかく今日は忙しい」
「まあ待て。今日は学食にお前を招待してやろうかと思ってな」
「……毒でも盛るつもりか?」
宥める様に言う大竹に怪訝な表情、冗談とは思えない真剣な口調で問う。
「ふん。お前を誘うのは嫌なんだが、俺とかろうじてためを張れるのは、校内じゃお前位だからな。特別ゲストとして先輩に紹介してやろうかと思っているのさ」
両肩を竦めながら説明をする大竹が『先輩』と言ったのを聞いて、緋影は眉をしかめた。
彼が『先輩』などと敬語を使ったのを耳にするのは中学時代から今までの五年間、一度も聞いた事がない。彼が敬意を払いそうなのは彼自身よりも圧倒的に強い奴くらいだが、そんな人間が校内にいるとは思えない。
(……ひょっとして……柄にもなくその『先輩』とやらに惚れてんのか?)