ぶら3
「どなたでしたっけ?」
尋ねると彼女はかくん、とうな垂れて、
「……ひどいです。深山君、私のこと、忘れたんですか?」
青年―緋影の表情を伺っているようだ。
「え、えと……その……あの」
まずい。本当に思い出せない。寝起きの頭をフル回転させて思考に耽る。
着ている制服から判断して、彼女は自分が通う高校の先輩のようだ。スカーフの色が二年生が着用する青だからだ。
でもおかしい。
ハーフなのか頭髪は淡く青みのきいた色で、切り揃えたショートカットだ。顔立ちは全体的に整っており、瞳は深海を思わせる藍。視力が悪いのだろうか、眼鏡をかけている。これほど目立つ容姿をしていれば名前位は知っているはずなのだが……
「どうかしたんですか、深山君?」
気付くと、彼女が自分の顔を覗き込んでいる。
「い、いやっ!なんでもありませんっ!」
「ひょっとして風邪ですか?」
「た、大した事ないです」
顔が赤くなっているのを自覚しつつも両手をブンブン振り、小首を傾げながら尋ねる彼女の言葉を否定する。顔が真っ赤なのは彼女にうっとりと見惚れていた自分の表情を見られたからだ。そんなこと、真っ正直に言える訳がない。
しかし、彼女は軍手をはめた両手で腕組みをしながらうんうん頷く。