まらぶ19
緋影は満腹の腹を抱えながらも何とか授業を終えた。
周りのクラスメイト達は皆帰路についていたが、腹がまだきつかった彼はしばらく体を休めていた。胃が鉛のように重く感じる。
「これしき何ともないっ!」
と、大竹は腹を抱えながら苦しそうに帰って行った。途中で吐いたりしないだろうか。
が、その思考は眼の疼きに遮られる。
(くそっ!)
眼が疼くと自分がこの世で最も憎んでいる人間のことを思い出してしまう。
いらつきを抑える事が出来ない。
「どうしたの、深山君?」
いつのまにか隣りに小川がいた。
「まだ帰ってなかったのか、お前?」
普通なら周りのクラスメイトのようにすでに帰宅しているはずだ。
そう答えるとどう言う訳か彼女の頬が膨らみ、少々怒っているようなものになる。
「私が残ってたら駄目な訳?」
普段の緋影ならばちゃんとした対応が取れただろう。だがこの時の彼は眼の疼きで思い出したくもない人物を思い出した為にいつになく不機嫌だった。
「ああ。少々邪魔だ。一人にしてくれ」
むー、と唸ると彼女は荷物を纏め出した。教室の戸がピシャリと音をたてる。
彼女の大きな靴音は廊下から戸を閉めた教室まで聞こえてくる。
(……もう少しまともな受け答えをしろよな、俺も)
軽い自己嫌悪を感じ、頭を振る。
しばらくぼんやりと夕日を眺めていた。
ぼうっ、と窓の向こうを見る。外の景色は夕日で真っ赤に染まっていた。