でぶ17
葵が頬杖をしながらにこにこと微笑み、二人の食事を見届けている。
なんと彼女はカレーうどんに親子丼定食をあっと言う間に平らげた。上品な食べ方ではあったのだが、そのスピードが尋常ではなかった。どうすればあんな上品な食べ方でこんな驚異的、いや、脅威的なスピードで食事ができるのだろう。
「ん、げふ……先輩、ごちそうさまっす」
大竹がいかにも食い過ぎです、という表情で呟く。ちゃんと喋っているつもりなのだろうが、それは呟きにしか聞こえない。
「あ、もうすぐ授業ですね。それじゃ私はこれで」
あれだけの量の食事を取ったとは思えない軽やかな足取りで彼女は食堂を去った。
にこっ、と青い顔で手を振る大竹。しかし、すぐに青い顔が引き締まる。
「おい、どうして先輩がお前を知ってんだよ」
低くどすの利いた声と共に、緋影の腹を小突く。
「さっきも言っただろう。本当に俺は知らない」
それは間違いない。少なくとも自分の記憶にはない。
「しかし、お前にはもったいない先輩だな。あれだけの美人なら競争率高そうだ」
「先輩は誰にも渡さん。俺がゲットする」
大竹がこんなに真剣な表情になるのを見るのは久しい事だ。
「例え、お前が相手でも、だ。緋影」
「俺が相手なもんか」
そんな訳がない。大体自分は、彼女と初対面(と、少なくとも緋影はそう思う)なのだ。