がぶ16
大竹は『くーっ!』、と言いながら袖を目元に持ってきておいおい泣くふりをしている。
「いいんですか?」
机に載せられた様々な食事を見つめて呟く。テーブルの上の料理分全額というのは奢るには額が大きすぎる。
「大丈夫です。それよりちゃんと食べて下さいね」
にっこりと微笑みながら割り箸を割る。綺麗に真っ二つに割れた箸を一度手テーブルに置き、礼儀正しく『いただきます』と両手をあわせて小声で呟く。
対称的に緋影と大竹は眼前の食事の山々を呆然と見つめている。どうすればいいのか、と言いたそうな表情だ。目の前に置かれた大きなカツ丼は見た者の食欲を無くしそうな程の量で、具だくさんの味噌汁がそれに拍車をかける。すぐ後ろに控えるチーズがたっぷりと乗せられた極悪なジャンボピザの脂っこさは何とかならないのだろうか。全て食べるのは不可能に等しい。否、不可能。
(……嫌がらせ……)
ではなさそうだ。葵はこちらを見ながら箸を進めている。
(……これを残したらどんな顔をするかな)
あまり見たくはない。
「……じゃあ、遠慮なく」
(もうやけくそだっ!)
二人は割り箸をばきりと乱暴に割り、がつがつとカツ丼を食い始めた。