いらぶ15
「ところで、深山君。その眼鏡、度は入ってませんよね?」
葵は唐突に話題を変えた。彼女にしてみればそれは何て事のない、ごくありふれた些細な疑問だったのだろう。
しかし、緋影は明らかに嫌そうな顔をした。
「……ええ。ちょっと訳ありでね」
声も機嫌の悪いものだとすぐにわかる。周りの雑音の中でも異様に緋影の不機嫌さが目立つ。
そう、本当ならこんなもの今すぐにでも粉々に破壊して、握り潰してやりたい位だ。
なぜなら、これは自分が世界で最も憎む人物が作ったものだから。
「……これをしていないと具合が悪くなるんですよ。頭痛がしたり、落ち着かなかったり……二、三十分なら平気ですから、風呂に入る時は手早くあがりますね」
「……そうなんですか」
「うん?何話してんだ緋影」
そこに大竹が大量の食事をトレイに載せて会話に割って入ってきた。顔色が青く見えるのは予定外の出費からだろうか。
「ありがとうございます。大竹君。それじゃこれは皆で食べて下さい」
葵の言葉で思考から現実に引き戻される。
彼女は大竹が持ってきたトレイを受け取り、ジャンボピザをテーブルの中央におく。そして、がっくりと両肩を落としている彼に、
「はい、大竹君。お駄賃です」
微笑み、食事代の全額を手渡した。
「せ、先輩!これは俺の……」
「奢りですよね。ですから遠慮なく頂きます。それは人込みの中に入って要望通りの食事を持ってきてくれたお礼です」