れらぶ10
「おい、緋影」
「何だ、大竹」
真っ正面を見つめている為、大竹の表情は見えない。
しかし、彼の口調がなんとなく固い。何だかんだ言って五年近い付き合いだ。声色で彼が真面目な話をしようとしているのはすぐにわかる。
「小川はやめとけ」
簡潔にそれだけを答える。
「どうして?惚れてんのか、お前」
彼に回りくどく聞くのは得策ではない。自らの疑問を率直にぶつける。
「そういう問題じゃない。あいつが悪いって訳じゃねえ。ましてやお前が悪い訳でもねえ。ただ、お前とあいつじゃ、駄目なんだ」
それはどういうことか?
「相性みたいなもんだよ。寿司食う時にはお茶飲むだろう?それぞれの食べ物には食い合わせの良し悪しがあるように、人にも相性があるだろう?」
大竹はそれきり口を開かなくなった。それ以上は何がなんでも絶対に喋らない、という意思が伝わってくる。
「安心しな。小川には悪いが彼女は俺の好みじゃない」
自分の答えに虚偽が無いと判断したのか、大竹は白い歯を剥き出しにして笑った。
「おっしゃあ!早く行こうぜ緋影っ!席が埋まっちまう」
背中を勢いよく数度叩くと彼は走り出した。
緋影は大竹の事をガラの悪い悪友と思っている。それは彼、大竹剛も同じだ。
しかし、緋影は周りの人間が彼等は『親友』だと思っていることには気付いてはいない。もちろんそれは大竹も同じ事ではあるが。